忘れられた今昔物語BACK TO THE FUTURE

エンタメ2017/08/9

怖い話はなぜ面白い?-今も昔も人を惹きつける恐怖のエンタテインメント

人は基本的に怖い話が好きです。

 

もちろん「大嫌い!」という人もいるでしょうが、大抵の人は怖い怖いと言いながら心霊写真を薄眼で覗きこんだり、会話のネタとして怪談話のレパートリーをいくつか持っていたりします。

 

恐怖心よりも好奇心が勝る、いわゆる“怖いもの見たさ”がそうさせるのでしょう。

 

さてこの怖い話。

 

人はいつから怖い話に魅了されるようになったのでしょうか。そして昔と今とで怖い話に違いはあるのでしょうか。

 

今回は怖い話の歴史や成り立ち、広がり方についてご紹介したいと思います。

 

 

民話・伝説に見られる畏怖の感覚

どこの国にも昔からある民話や伝説などの物語。ほとんどのものは土地にまつわる言い伝えや、神や自然に対する信仰を表した内容となっています。

 

その中には、「おそれ」について述べられているものが少なくありません。

 

なぜなら民話や伝説は物語であると同時に、教訓や戒め、そして原始的な恐怖の言い伝えでもあるからです。

 

私たち人間は、古くから神、霊、自然、死、強大な力などに畏怖を覚えることで、自身を守ってきました。

 

しかし科学の発達した現代では、目に見えないものに思いを馳せること自体が難しく、ともするとそういった存在を忘れがちです。

 

民話や伝説が「おそれ」を含んだ形で残り続けているのは、それを見聞きすることで畏怖の感覚を思い出し、恐怖によってより強く生を感じられるからかもしれません。

 

 

日本の夏の風物詩 怪談

怖い話といえば怪談。中でも四谷怪談・皿屋敷・牡丹灯籠の三話は「日本三大怪談」として有名です。

 

そして怪談といえば忘れてならないのが、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。

 

ギリシャ出身の彼は1890年に初来日。以来すっかり日本が気に入り、1896年に日本に帰化。1904年に東京で亡くなるまで日本で暮らし続けました。

 

八雲の著作でもっとも有名なものといえば、その名も『怪談(1904)』。

 

日本各地に伝わる伝説、幽霊話などをまとめ、八雲が独自の解釈を加えて情緒豊かな文学作品にしたものです。

 

また、松江中学校・東大などで英語や英文学を教えるかたわら日本文化を研究。『知られざる日本の面影(1894)』などの著作を通じて、日本の風土を海外に紹介しました。

 

日本の自然と文化を深く愛し、その姿を世界に広めた功績は、今でも多くの人によって語り継がれています。

 

 

都市伝説の登場

民話や怪談と似て非なるものに、都市伝説があります。

 

都市伝説とは、昔からある土着信仰的な民間伝承や伝説と区別する言い方で、最近ポッと出た噂話があたかも曰くありげな印象を伴って流布される話、という意味だそうです。

 

口裂け女、高速道路を車と同じ速さで走る老婆、チェーンメールの話などが都市伝説に該当します。

 

根拠も出どころもあいまいな都市伝説ですが、一部の内容は古くからの伝承などよりはるかに認知度が高く、また一度話題になるとあっという間に広まっていくという特徴を持っています。

 

その理由の一つが、話の持つ現実味です。

 

伝承や怪談の時代背景が古いのに対し、都市伝説はごく最近に登場した話ということもあり、見聞きする人が状況を想像しやすい設定になっています。

 

そのため内容を知った人を「ひょっとすると自分の身にも何かしらの不運な出来事が降りかかるのでは」という気にさせるのです。

 

この「もしかしたら自分も……」というエンパシー(自己移入)性の強さが、都市伝説が台頭した最大の要因といえるでしょう。

 

 

口承という名のバイラル効果

今でこそ情報の伝播・拡散にはインターネットが活用できますが、つい数十年前までこんなに便利で手軽なツールは存在しませんでしたし、扱えるのはごく一部の限られた人たちだけでした。

 

では、昔の人たちはいったいどうやって自分たちの持っている情報を広めていったのでしょうか。

 

文字がなかった時代、情報の伝達は口伝えや図画、舞や儀式などの所作で行われていました。今でいう“口コミ”の要領です。

 

現代より行動範囲が狭く人間関係が密だったコミュニティでは、口承による情報共有が文化・伝統の保持に繋がると同時に、生活の上で必要不可欠でした。情報の欠落はイコール生命維持の危機でもあったのです。

 

人々の間で交換される情報の中には、生きる上で必要な内容もあれば、冗談や噂話といった娯楽的要素を含むものもありました。

 

そして人から人へと情報が伝わっていく過程では、ときに誇張や誤りが混じることがあります。

 

ここに民間伝承や伝説が含まれることによって、自然現象や言い伝えが原型から離れて肉付けされ、恐怖心を煽る怖い話ができあがっていったのです。

 

人の関心を誘う怖い話はウイルス(バイラル・viral)感染のように瞬く間に広まり、一部は怪談となり、一部は都市伝説となって現在まで残るようになっていきました。

 

 

畏怖は生き物としての本能

平凡な日常にちょっとした刺激を加えるのに、怖い話というのは手軽さといい効果といい実に最適です。

 

それは、怖い話が自身の興奮を呼び起こしたり人とのコミュニケーションを円滑にしたりといった、エンタテインメントの側面を持っているから。

 

恐怖と笑いは紙一重という説がありますが、まさにその通りで、強い恐怖は強い娯楽の要素を多分に含んでいる場合が多いのです。

 

そもそも恐怖とは何でしょう。

 

それは「自分の理解の範囲外のもの」に対する拒絶感。

 

自分の知らないこと、わからないことを目の当たりにしたとき、人は無意識のうちに強い防衛反応を示します。その反応こそが恐怖のメカニズムであり、自己保存のための本能です。

 

科学が発達し、安心や安全といったものが日常となっている日本において、本来的な恐怖を体験する機会はどんどん減ってきています。

 

その中で恐怖を求める心理には、生への無意識な渇望が潜んでいるのかもしれません。

FOLLOW US

OPENiTは多彩な生き方を紹介する
コンテンツが詰まったWEBマガジンです。
今すぐフォローして最新情報を友達にもシェアしよう!

おすすめ記事

記事をもっと見る

一覧に戻る

最新記事 NEW

  • 最新記事

フォローしよう!

FOLLOW US

  • line
  • twitter
  • facebook