忘れられた今昔物語BACK TO THE FUTURE

エンタメ2017/09/6

見られているのは動物か、ヒトか-動物園と現代アニマル・シチュエーション

最近、動物園に行きましたか?

 

動物園と聞くとなんとなく「子どもが行くところ」というイメージの方が多いかもしれませんが、最近では動物の特性を生かした展示方法などで、大人が行っても十分に楽しめるようになっています。

日本は世界でも有数の「動物園大国」。全国各地にさまざまな動物園が数多くあり、中でも東京の上野動物園や北海道の旭山動物園は、規模の大きさや来園者数、ユニークな取り組みなどで有名です。

 

私たちにとって、野生動物の生態を知るのにもっとも身近な施設である動物園。

 

しかし、現在多くの動物園は経営危機に瀕しています。

 

来園者数の減少、施設の老朽化、飼育動物の高齢化など、動物園の抱える問題はどれも深刻です。

 

動物園に行く人が減っているのはなぜか。動物園の運営が大変なのはなぜか。今回はその疑問について、動物園の現状と、現代の人間と動物とのかかわり方を踏まえて考えていきたいと思います。

 

 

日本で最初の動物園 恩賜上野動物園

現存する世界最古の近代動物園は、オーストリアの首都ウイーンにある世界遺産シェーンブルン宮殿と庭園群の中にある「シェーンブルン動物園」。日本の場合はそれが東京・上野にある「恩賜上野動物園(通称:上野動物園)」になります。

 

上野動物園で飼育されているのは、スマトラトラ、ニシローランドゴリラなどの希少動物をはじめとした約500種類。中でも人気なのが、最近赤ちゃんが生まれたことで話題のジャイアントパンダです。

 

上野動物園の歴史は長く、戦時中は多くの動物が殺処分されてしまうなどの悲しい出来事もありました。また、2008年にはパンダのリンリンが亡くなったことで来場者数が激減。今でこそたくさんの来場者数を誇る上野動物園も、さまざまな紆余曲折を経ているのです。

 

では次に、動物園そのものの歴史を振り返ってみましょう。

 

 

集められる動物、飽きてしまう人間


もともと日本には「動物園」という文化は存在しませんでした。


動物園の発祥はヨーロッパ。


王侯貴族が戦争や貿易で他国に進出した際に収集した動物や、国内外からの貢物として贈られためずらしい動物たちを、自分の庭園で飼育したことが始まりだといわれています。


明治になって日本に西洋文化が入ってきたとき、動物園の概念も日本へとやってきました。


これまで見たことのなかった動物たちに、当時の日本人たちは大喜び。動物園には連日多くの人が大挙して押し寄せました。戦後、日本は高度経済成長もあり、動物園には次々と新たな動物が集められるように。同じように、全国のあちこちに数多くの動物園が開園したのです。


しかし、人間は飽きる生き物。


最初はめずらしかった動物も、数回見れば慣れてしまいます。加えて景気の低迷もあり、人々はだんだん動物を見ることに興味を示さなくなっていくのです。


こうして動物園を訪れる人の数は減り、動物園人気は急激に衰退していきます。

 

 

環境エンリッチメントと小規模施設

最近の動物園では、飼育環境をできるだけ自然な状態に近づけたり、動物が本来持つ行動や能力を引き出して刺激を与えたりといった、飼育下の動物の福祉を増進する取り組み(環境エンリッチメント)が積極的に採用されています。

 

この取り組みは、単調になりがちな飼育環境に変化を与えて、動物たちのストレスを減らすというもの。また、動物たちがいきいきと過ごす様子を公開することで来客者の増加につなげるなど、施設の運営を支える役割も果たします。

 

しかしこの取り組みを本格的に採用するには、多額の予算と長期の工事期間、そして人員補充が必要です。

 

小さな施設ではなかなか対応が難しく、どこも苦戦を強いられています。

 

日本の動物園の8割は公共施設。運営主体が自治体であるため、予算の大半は税金です。自治体主導である以上、地域にとって必要な施設でないと判断されれば閉園に追い込まれてしまう可能性もありますし、収益を上げるために入園料を値上げしようにも施設の一存では決められません。

 

それでも中には独自のアイデアで工夫を凝らすなど、お金をかけずに環境変化に取り組んでいる施設もあります。その熱意に客足が戻ったり、応援が寄せられるようになったりという例も。

 

大規模施設と違って収蔵している動物の種類や展示の仕方、使える予算に限界がある小規模施設は、常に進退を問われている状態です。

 

そして職員や来園者たちの協力のもとに、生き残りのための術を模索し続けています。

 

 

珍しい動物が身近になった現代

動物園の来場者数が減っているのにはさまざまな原因がありますが、そのうちの一つが少子化。子どもの数が減ったことで、施設を訪れる人数や回数が減ったのではといわれています。

 

そのほかに、これまで動物園や水族館でしか見られなかった動物たちが、ごく身近で見られるようになったという理由もあるかもしれません。

 

たとえば、今ではすっかり一般的な飲食店の形態となった「動物のいるカフェ」。

 

最近ではネコやイヌ、ウサギといったなじみのある動物のお店だけでなく、フクロウや爬虫類、大型魚、ペンギンのいるお店も登場しています。

 

また、カワウソやハリネズミなど個人でめずらしい動物を飼育する人も増えましたし、それに伴う形でめずらしい動物を扱うペットショップの数も増加しています。

 

これまでは、こういった動物たちは動物園などの飼育展示施設、もしくはテレビなどで遠目から見るしかない存在でした。

 

ところが、今はそれらの動物たちが直接触れられる距離にいるのです。

 

もちろんゾウやキリン、ゴリラのように大型の動物や個人で飼育できない動物は、今までどおり施設で見るしかありません。

 

しかし、ちょっとものめずらしい動物がすぐそばで見られるとなれば、「わざわざ出向いてまで大型動物を見に行かなくても」と思ってしまう人が増えるのも、ある意味仕方ないのかもしれません。

 

 

動物園は好きですか?

誰もが一度は訪れたことのある動物園。

 

多種多様な動物の姿は、私たちの心にさまざまな印象や発見をもたらしてくれます。

 

なにより、テレビや写真からでは伝わってこない「生き物の息づかい」を感じられるのは、実際に動物を目の当たりにできる動物園だからこそ。そこには近所のカフェにはない生命のダイナミックさもあります。

 

改めて、動物園に興味を持ってみませんか。

 

動物園とそこに暮らす動物たちの未来を動かすのは、私たちの関心や行動です。言い換えれば、ヒトと動物が共生できる世界を作れるか作れないかも、私たち次第ということ。

 

いま日本の動物園にいる動物たちが、どんな環境で飼育されているか。動物園がどんな取り組みをしているか。そして私たちがそこから感じることは何か。

 

動物園で、動物たちから直接ヒントをもらってみてはいかがでしょうか。

 

また、大きくいえば私たちヒトも動物のうちの一種。私たちは動物を見に行っているつもりでも、もしかしたら見られているのは私たちヒトかもしれませんよ。

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