忘れられた今昔物語BACK TO THE FUTURE

流行2017/03/8

自分を撮る – 「自撮り文化」の意外と長い歴史

『自撮り』『Selfie(セルフィー』という言葉、皆さんは聞いたことがありますか?

 

スマートフォンやSNSに日常的に触れている10代、20代の人にはお馴染みのこの言葉は「カメラを自分自身に向け、手持ち撮影すること(広辞苑)」を指します。

近年、スマートフォンを持ったままで自分を撮影できるインカメラ機能の発展や、自撮り棒などの自撮りグッズの登場で、撮影者が被写体になることが当たり前になってきました。

 

ところで、この自撮りという行為がいつ生まれたかご存知ですか?

今回は自撮り(セルフィー)にスポットを当て、その始まりや自撮り文化の歴史を追っていきます。

 

 

 

1839年:世界で初めて撮影者が被写体になる

 

「自撮り」の始まりは今から178年前の1839年、アメリカの化学者ロバート・コーネリウスによって行われた撮影にさかのぼります。

当時のカメラは銀板式と呼ばれ、1枚の写真を撮るのに約30分ほどかかりました。

フィラデルフィアの路上で、コーネリウスはカメラをセットしてから素早くカメラの前に移動し、そのまま動かずじっとしていることで世界で初めて自分で自分を撮影することに成功したのです。

 

(実際の写真)

 

当時、写真の技術はまだまだ未発達で、写真撮影の文化も一般には根付いていませんでした。

この写真は記録や記念というよりも、「カメラ」という発明品への実験的意味合いの方が大きかったようです。

 

そもそもカメラが登場する以前から、世界では「自画像」という形で自分の姿を記録に残す文化が根付いていました。

しかし自画像はあくまでも絵。他人に依頼して描いてもらうか、絵が得意な人が自分で描くかという選択肢しかなく、気軽にできるようなものではありませんでした。

 

カメラが生まれたことで、自分の姿を残すことへの敷居がぐっと低くなったのです。

 

 

1920年:世界初の「自撮り写真」が誕生する

(1920年の自撮り1)

 

自分でカメラを持ち自分自身を撮影するという自撮りスタイルが世界で初めて誕生したのは1920年。

アメリカの写真家・ジョー・バイロンによってでした。

 

上が当時のバイロンの自撮り風景ですが、手にしているカメラが現代の物よりいくぶん大きいとはいえ、今の自撮りスタイルとまったく同じですね。

 

(1920年の自撮り2)

 

こちらが実際に撮られた写真です。

なかなかよく撮れていますね。

 

その後1900年代~1960年代にはフィルムカメラが誕生、発展し、一般家庭に広く普及しました。

1960年以降は一定時間がたつと自動的にシャッターが押される「セルフタイマー」機能を搭載したカメラが生まれ人気を博し、カメラで自分自身を撮影することはますます一般的になっていきます。

 

 

1990年代:プリクラ文化が生まれる

 

1995年、日本で「プリント倶楽部」が誕生しました。「プリクラ」の愛称で10代、20代の女性を中心に親しまれたそれは、撮った写真がシールになってプリントされるという画期的なもの。

 

プリクラを日本で初めて発明したのはゲーム会社のアトラスでしたが、その後他社のプリクラ機が次々と登場し競争が激化。それに伴い美白や美肌、デコレーション機能など女性を可愛く魅力的に見せるプリクラの技術がめきめきと発展していきます。

日本産のプリクラ機はアジア圏に輸出され、中国や韓国、台湾でも親しまれました。

 

同じ時期に欧米でも「Photo booth(フォトブース)」というプリクラに似た機械が続々と登場し、10代を中心に自分を撮る文化がより身近になっていきました。

Photo boothはプリクラに比べてデコレーション機能が少ないシンプルなものが多かったようです。

 

この頃からアジアと欧米の間で、自撮りの目的に少しずつ違いが出てきます。

アジアで人気を博したプリクラが容姿を魅力的に見せる機能に秀でているのに対して、海外のPhoto boothは友情や思い出を残す記録目的の機能が重要視されました。

この違いが現代の自撮り文化にも通じています。

 

 

2000年初頭:カメラ機能を持つ携帯電話が生まれる

 

2000年代初頭にカメラ機能を搭載した携帯電話が登場すると、撮った写真をメールやインターネットを使い簡単に共有することができるようになりました。

 

撮った写真をすぐに他者と共有できる携帯電話のカメラは、その後コミュニケーションツールとしての役割を担うようになります。

現在の自分の状態や、相手へのメッセージを伝えるために写真を使うようになったのです。

 

それに伴い、携帯電話のカメラ技術も向上。

インカメラの登場や、レンズ部分を180度回転できる携帯電話の発売が自撮り文化を後押しました。

 

 

2010年~:自撮りブームが生まれる

 

現在の自撮りブームは、2010年に生まれたといわれています。

2010年、端末の両面にデジタルカメラが搭載されたiPhone4が発売されます。それまでの携帯電話のカメラより画質が格段に向上したことで、誰でも手軽に美しい写真を撮れるようになりました。

 

またほぼ同じ時期に、写真共有型のSNS「Instagram」が誕生します。

SNSはインターネット上で他者と簡単につながり、コミュニケーションをとれるサービスです。

携帯電話のカメラ機能で、写真をコミュニケーションの道具として使うことが浸透していたこともあり、Instagramは10代、20代の若者層を中心に流行しました。

 

iPhone4とInstagram、この2つが同時期に登場したことで、人間が誰しも持っている承認欲求(誰かに自分を見てほしい、認められたいという欲求)を満たしてくれるツールとして「自撮り」にスポットが当たりました。

 

最も身近な被写体である自分をInstagramなどのSNSに投稿し、他者からポジティブな反応を得ることで自分の内側にある承認欲求が満たされる。

カメラという発明品への実験が始まりだった自撮りが、約200年の時を経て文化として人々の日常に密接に関わるようになったのです。

 

 

自撮りブームは進化する?

 

2013年、日本の広辞苑にあたるオックスフォード英語辞典に、自撮りを意味する造語『Selfie』が正式に登録され、自撮り文化はすっかり市民権を得ました。

簡単に自撮りができる自撮り棒の流行や、SnowやShotsなど自撮りに特化した画像加工アプリの登場で、自撮りブームはさらに加熱していくとみられています。

将来的にはドローンで自撮りできるようになるのでは、なんていう意見も。

 

一番身近な「自分」を被写体として客観的に認識できる自撮りは、つきつめていくと心理学の分野にまで話が及びます。

近年の自撮りブームの背景には、技術の発展と共に人間の複雑な深層心理が絡んでいるのです。

 

自撮りブームはまだまだ続いていくといわれています。

これから10年後、20年後、自撮り文化はどう変わるのか。

現代に生きる人々はその変遷の目撃者、そして体験者となっていくでしょう。

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