忘れられた今昔物語BACK TO THE FUTURE

心理2017/08/23

学校という名のプレッシャー-不登校をめぐる経緯と取り組み

文部科学省の行った「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(2016年10月27日公開)」によると、全国の国公私立の不登校児童・生徒数は小学校27,581人、中学校98,428人の合計126,009人。

 

不登校生徒の割合は中学校が最多で、学年が進むにつれて増加し、中学3年生がもっとも多いという結果が出ています。

実は不登校という言葉ができたのはごく最近。では、その前までは不登校の子どもはいなかったのでしょうか? 

 

答えはノー。

 

言葉で定義される前から、学校に行けない、馴染めない子どもはいました。そういった子どもたちときちんと向き合い始めたときに生まれた言葉が「不登校」なのです。

 

今回は、不登校をめぐる過去から現在までの経緯と取り組みについてご紹介したいと思います。

 

 

学校恐怖症・登校拒否・不登校

不登校について、文部科学省は「児童が病気や経済的理由を除いて年間30日以上欠席している状態」と定義しています。

 

そもそも「不登校」とは、20世紀前半にアメリカで定義された「学校恐怖症」が元になってできた言葉。学校恐怖症という言葉が最初にでき、その次に登場したのが登校拒否、最近になって登場したのが不登校です。

 

学校恐怖症とは、子どもが何らかの心理的原因で学校に行けなくなる症状のこと。

 

神経症である対人恐怖症の1つと考えられ、学校に対して強い恐怖感や不安感、身体的な異常などを感じ、「学校に行けない」状態に陥ることを指します。

 

しかし中には学校恐怖症に当てはまらないケースもあり、その数は時代とともに徐々に増えていくように。

 

そこで1984年、当時の文部省が「何らかの心理的、情緒的な原因により、客観的に妥当な理由を見出されないまま児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状態」を「登校拒否」であると定義しました。

 

その後、都度定義されなおされ、現在では「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものは除く)」となっています。

 

一方、「不登校」は親に反抗したり学校に馴染めなかったりといったことが原因で、自ら学校に行かない状況を指した言葉。ただ、中には行かないより行けないに近い理由を抱えている子もいます。

 

現在では登校拒否と不登校はほぼ同義で使用されていますが、これは「不登校を正確に定義することの難しさ」を表しているとも言えるのです。

 

 

潜在的か表面的かの違い

先に書いたように、不登校という言葉ができる以前から学校に行けない子どもはいました。原因はさまざまですが、いじめや家庭環境、本人の心身の問題など、今とさほど変わりありません。

 

それなのに、多くの人(主に40代以上)は「昔は不登校児があまりいなかった」と感じています。なぜでしょう。

 

日本で不登校児が急増したのは90年代初頭。今が1クラスに1人だとすると、30年前では1学年に1人もしくは2人程度。確かに数だけ見れば、学校に行けない子どもは今ほど多くありませんでした。

 

ただし、ここには今と昔での不登校に対する認識の違いが存在します。

 

一昔前まで世間は不登校の原因を、不良・非行、甘え、精神的な不安定さといった「家庭および本人の問題」と認識していました。つまり自分で解決すべき問題であり、学校や社会が関与することではないと思われていたのです。

 

今より通学への強制力も大きく、たとえ子どもが拒んだとしても、とにかく無理やりにでも学校に通わせるというのが当然のこととしてまかり通っていました。

 

そのため見た目上は不登校ではないものの、実際には学校に適応できていない「潜在的な不登校児」が数多く存在することに。ここに「昔はあまりいなかった」というズレが生じる要因があるのです。

 

今でこそ不登校児の増加が目立つようになりましたが、それは表面的か潜在的かの違いでしかなく、今も昔も学校に行けない、行きたくない子どもは一定数存在します。

 

 

不登校は社会全体で取り組む問題

時代の変化とともに世間の認識も変わり、今では「不登校は単なる問題行動ではない」「通学の無理強いはよくない」と、学校に行けない子どもたちへの対応はずいぶん柔軟になりました。

 

不登校への取り組みは家庭や学校、地域によってさまざまですが、共通するのは「子どもの気持ちを理解する」ところに重点をおいているということ。

 

学校に行けない、行きたくないとなった原因が人それぞれなのと同じように、どう対応するかも個人に合わせて多様であって当然。それには家庭や学校だけでなく、社会全体での協力が不可欠です。

 

不登校を他人事とせずにきちんと理解し、受け入れ、サポートする。そういった体制が整えば、子ども・家庭・学校・社会といった大きな連動が可能になるはずです。

 

 

多様性を受け入れられる社会へ

現在、不登校の子どもの数は高止まりしている状態です。いじめなどが原因で自殺する子どもの数も減少していません。

 

この状況を少しでも改善するためには、教育現場での対応だけでなく、たとえば法や施策など大きな枠組みについても考える必要があります。

 

2016年12月、不登校の子どもたちを国や自治体が支援する議員立法の教育機会確保法が参院本会議で可決、成立しました。

 

この法では、不登校の子どもの教育機会の確保のために国や自治体が財政支援に努めることや、国や自治体が子どもや親に情報提供をすること、義務教育が受けられなかった人向けに自治体が夜間中学などで就学できる措置をとることなどが盛り込まれています。

 

しかし、内容に賛否があるのも事実です。

 

だからこそ今後も法案の行方に注視し、議論を継続させていくことが重要といえます。その取り組みが、本当の意味で「多様性とは何か」を考え、受け入れることに繋がっていくでしょう。

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