ヨハンナ=スピリ原作の文学作品

「アルプスの少女ハイジ」といえば、知らない人はいないスイスが舞台のお話。
原作はスイスの作家ヨハンナ=スピリが1880年に執筆した「ハイジの修業時代と遍歴時代」。
日本では本よりもアニメの方が有名かもしれませんね。
ハイジやおじいさん、ペーターやクララなど、心優しく魅力的な登場人物や、アルプスの山々の大自然、山羊をはじめとした愛らしい動物たちなど、作品内で描かれる世界は今も多くの人々に愛されています。
今回はハイジの「おじいさん」にスポットを当てます。
「アルムおんじ」と呼ばれ、物語の序盤では偏屈で決して他人に心を開かなかったおじいさん。ハイジと一緒に暮らし始め、徐々にその心の壁が壊されていきます。
そんなおじいさんには、アニメでは明かされていない壮絶な過去がありました。
原作に記述されている、ハイジのおじいさんの過去とはどんなものでしょうか?
ナポリの傭兵だったおじいさん

ハイジのおじいさんは元々、村で一番大きな農園を持つ裕福な家庭の出身でした。
しかし若い頃、怪しい連中とつるみ賭け事や酒におぼれ、財産のほとんど失ってしまいます。
おじいさんの両親はこのショックにより体を病み、他界。
両親の死後、おじいさんは村を出て放浪し、ナポリの傭兵(兵隊)として働き始めました。
しかし荒れた生活はすぐには直らず、喧嘩で人を殴り殺したという噂がたつようになります。
実際におじいさんが人を殺したかどうかの明確な記述はありませんが、この噂は村人の間に広がり、
「アルムおんじは変人で、昔、人を殺したこともあるそうよ」
とささやかれるように。
結婚して子どもをもうけるも、妻と死別

軍隊から脱走したおじいさんは、ひっそりと身を隠して暮らし始めました。
そんな生活が15年ほど経った頃、おじいさんは結婚し、のちにハイジの父親となる一人息子の「トビアス」をもうけます。
ちなみにトビアスは非常に明るく人望のある人物だったそうです。ハイジの性格は父親似かもしれませんね。
穏やかな暮らしが続くかと思いきや、愛する妻が病気にかかり死別。その後トビアスも事故により亡くなってしまいます。
そのショックからハイジの母親である「アーデルハイド」も病気になり、他界。
おじいさんは大切な人たちを皆失ってしまったのでした。
傭兵時代の噂も相まって村に居場所がなかったおじいさんは、一人アルムの山で暮らすことになるのです。
そしてそこで、ハイジと運命的な出会いをするのでした。
スイス観光はぜひ「ハイジの村」へ!

おじいさんの過去を知ると、なぜ頑なに人を拒むようになったのかがわかります。
愛する存在の死や、人々の心ない噂が何度もおじいさんを傷付けてきたのでしょう。
物語の舞台であるスイスには、観光名所として「ハイジの村」があります。
おじいさんの山小屋やハイジが駆け回ったアルプスの野原を間近で見ることができるので、スイスを訪れた際はぜひ観光してみてください。